去年の春、特別定額給付金の支給が検討された際、国民一人ひとりの所得を一元的に把握するデータがないため、所得水準に応じて迅速に配分することができず、全国民一律に10万円が支給されました。また、コロナの陽性者情報や、ワクチン接種をした人の情報など、国民の命と健康を守るためには、情報を一元化し、ネットワーク化する必要性は高いと思います。 だから今、デジタル庁!デジタル法案!と、勢いに任せて推し進められているように見えます。でも、ここで立ち止まって法案の中身をしっかり検証しないと非常に危険です。 今回の法案について、情報公開・公文書管理に詳しい三宅弘弁護士は「個人情報が内閣中枢に吸い取られる可能性が極めて高くなる」と危険を指摘されています。すべての行政機関と地方自治体と民間部門の個人情報を共通ソフトで一体として利使用する権限を手放しで政府に与えてしまうことほど恐ろしいことはありません。本人の同意なく情報が政府に提供されるのであれば、同時に政府の情報利用をしっかり監視する独立した第三者機関を置くことがセットになっていなければなりません。今回の法案では、「業務の遂行に必要で相当な理由のあるとき」は、本人の同意なしで個人情報の目的外使用や提供が行政機関に認められています。ところが、個人情報保護委員会は、行政機関の情報の利使用に問題があると判断しても、これに対し「勧告」はできても、「命令」や「立ち入り検査」を行う権限はありません。同じ個人情報保護委員会が、民間による情報の利使用に対しては、命令や立ち入り検査を行う権限を有しているのに、行政機関の情報利用については、その権限が外されていることは、法の欠陥と言わざるを得ません。 そして、この法案により広く情報の利使用が可能となる政府は、これまで「桜を見る会」、森友、加計問題などの公文書改ざん・違法廃棄や、巨額の買収が認定された公職法違反事件と党費との関連など、安倍政権から管政権に連なる隠ぺい体質の染み付いた内閣を中心とする政府なのです。この政府に、第三者機関によるしっかりとした監視なく、情報の利使用権限を認めることは、あまりにも危険です。